ラプラスの悪魔とは?

ラプラスの悪魔 哲学

脳の報酬系についての記事を作成するために勉強していた時、ふと疑問を感じました。

人間は自分の意志で行動しているのだろうか?

そう思い調べてみると決定論という物理学の考え方があることを知りました。

今回はニュートン力学の決定論でよく話題になるラプラスの悪魔について解説します。

余談ですがホロライブのタレントであるラプラス・ダークネスに相関があるのかもしれません。

ラプラスの悪魔とは?――決定論と現代科学の境界を探る

「ラプラスの悪魔」とは、宇宙のすべての情報を完全に知り、過去と未来のあらゆる出来事を予測できるという仮想的な知的存在を指します。

これは18世紀のフランスの数学者であり天文学者でもあったピエール=シモン・ラプラスが提唱した、古典的決定論の極限のイメージです。

ラプラスの悪魔のアイデアは、古典物理学に基づく決定論を強調するもので、特にニュートン力学の枠内で発展しました。

ニュートン力学の法則によれば、物体の運動はその初期条件(位置、速度、質量など)に従って完全に予測できるとされていました。

ラプラスは、この考え方を極限まで押し進め、もしすべての物質の位置と運動量を完全に知ることができる存在がいれば、その存在は宇宙のすべての出来事を予測できると主張しました。

ラプラスの悪魔の基本概念

ラプラスの悪魔の基本概念は、宇宙のあらゆる粒子(物質、エネルギー、その他)の位置と運動量を完全に知っている存在がいれば、その存在は過去、現在、未来のすべての事象を完全に予測できるというものです。

この存在は、ニュートンの運動方程式を使って、全ての粒子の相互作用を計算し、宇宙の全体像を把握することができます。

ラプラスの悪魔が宇宙のすべての情報を知り、全てを予測できるという仮定に基づいていますが、その前提にはいくつかの重要な要素があります。

古典的決定論

古典的な決定論は、世界のすべての出来事が物理法則に従い、これらの法則によって完全に予測可能であるとする考え方です。

ニュートンの運動法則は、この決定論的な世界観の基盤となっており、物体の動きや相互作用は、質量、力、加速度などの要素に基づいて計算することができると考えられていました。

ラプラスの悪魔も、この古典力学的な決定論を前提としています。

宇宙の初期条件の完全な知識

ラプラスの悪魔が全てを予測するためには、宇宙に存在するすべての粒子の位置と運動量、すなわち「初期条件」を完全に知る必要があります。

これには、惑星、星、銀河、さらには微視的な粒子の動きまでも含まれます。

この初期条件が完全にわかれば、その後のすべての出来事は予測可能であるというのがラプラスの考えでした。

完璧な計算能力

ラプラスの悪魔は、宇宙に存在する無数の粒子の運動と相互作用を計算するための無限の知識と計算能力を持っていると仮定されています。

この「悪魔」は、非常に複雑な計算を瞬時に行うことができ、その結果、未来の出来事を完全に予測できると考えられます。

ラプラスの悪魔の意義

ラプラスの悪魔の考え方は、当時の物理学的な決定論に基づいたものですが、この概念は単なる物理学の理論以上に、哲学的な問題にもつながります。

具体的には、「自由意志」や「未来の不確定性」といった問題に対して大きな疑問を投げかけます。

自由意志の問題

ラプラスの悪魔の仮説によれば、すべての出来事は過去の状態から予測可能であり、未来の出来事はあらかじめ決まっていることになります。

この考えに従えば、人間の意思決定もまた、物理法則によって完全に決定されるため、「自由意志」は存在しないという結論に至ります。

つまり、人間が「自由に選んでいる」と感じること自体が、脳内の物理的プロセスの結果にすぎないということになります。

未来の不確定性の問題

ラプラスの悪魔は未来のすべてを予測できるとされますが、この仮定は、未来が不確定ではなく、すでに決まっているという前提を意味します。

これに対して、現代の物理学や哲学では、未来は完全には予測できず、確率的な要素が含まれているとする立場が広がっています。

ラプラスの悪魔に対する現代科学の挑戦

ラプラスの悪魔の仮説は、古典物理学に基づいたものですが、現代の科学、特に量子力学やカオス理論の発展によって、その妥当性は大きく揺るがされています。

以下の要素が、ラプラスの悪魔に対する現代科学からの挑戦となっています。

量子力学と不確定性原理

20世紀初頭、量子力学の登場は、ラプラスの悪魔に対する最も大きな挑戦の一つとなりました。

特にヴェルナー・ハイゼンベルクの不確定性原理は、粒子の位置と運動量を同時に正確に知ることが不可能であるとする法則であり、これによりラプラスの悪魔の仮説が否定されることとなります。

不確定性原理によれば、粒子の位置を正確に知ろうとすると、その運動量に対する不確実性が増大し、逆に運動量を正確に知ろうとすると位置が不確定になります。

このため、量子レベルでは物質の未来を完全に予測することが不可能であり、ラプラスの悪魔が前提としていた「すべての粒子の完全な情報」を知ることは理論上不可能であることが示されました。

カオス理論とバタフライ効果

ラプラスの悪魔に対するもう一つの重要な挑戦は、カオス理論です。

カオス理論は、システムの初期条件に対するわずかな変化が、時間が経つにつれてシステム全体に大きな影響を与えることを示しています。

これは「バタフライ効果」として知られており、初期条件の非常に小さな違いが、予測不可能な結果をもたらすことを示唆します。

カオス的なシステムでは、初期条件の微小な誤差が、長期的には巨大な違いを生み出すため、ラプラスの悪魔が初期条件を正確に知っていたとしても、未来を正確に予測することは困難です。

複雑系と予測の限界

現代の科学では、複雑系という概念が注目されています。

複雑系とは、多数の要素が相互作用し、全体として予測不可能な挙動を示すシステムのことを指します。

自然界や社会には複雑系が数多く存在し、天候、経済、さらには脳の機能も複雑系の例として挙げられます。

複雑系のシステムは、単純な決定論では説明しきれない予測不能な動きを見せるため、ラプラスの悪魔が宇宙全体を予測するという仮定は、現代の科学の視点から見ると非常に困難です。

ラプラスの悪魔の哲学的意義

ラプラスの悪魔は、科学的な理論としては現代では否定されつつありますが、その哲学的な意義は依然として深いものがあります。

特に以下のような問いが、この概念を通じて浮かび上がります。

決定論と自由意志の対立

ラプラスの悪魔が示す完全な決定論の世界では、すべての出来事が既に決まっているため、自由意志の存在は否定されます。

しかし、実際には私たちは自分が自由に選択を行っていると感じています。

この自由意志の感覚は、決定論との間でどのように調整されるべきかが、未だに議論されています。

未来の予測可能性

ラプラスの悪魔が提唱する未来の完全な予測可能性は、現代の科学では否定されていますが、依然として「どの程度未来を予測できるのか」という問いは残ります。

特に人工知能やビッグデータの進展により、ある程度の未来予測が可能になってきている中で、その限界や倫理的な側面が問われています。

結論

ラプラスの悪魔は、古典的決定論を象徴する哲学的・科学的な概念であり、宇宙のすべての情報を知り、すべてを予測できるという極限の考え方です。

しかし、現代の科学、特に量子力学やカオス理論の発展により、ラプラスの悪魔が前提とする完全な予測可能性は否定されました。

ラプラスの悪魔を調べてみた感想

この世に、この世の全ての事を知っている存在がいればこれから起こることは全て予測できるのでは?というお話でした。

現代科学でラプラスの悪魔は否定されていますが、物語で使えそうな面白い話題でした。

実際にモチーフに使われたかもしれない話では、ジョジョの奇妙な冒険、ストーンオーシャンに出てくるプッチ神父も「すべての人間がこれから起こることを全て知っている」世界を作ろうとしていましたというものがあります。

ちなみに物理学では概念として「悪魔」という言葉を使うそうです。

ラプラスの悪魔の他にもマクスウェルの悪魔というものが有名のようです。

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